週末 「環」に関する考察

今日の午前中は休日出勤になりました。職場の地域行事に私は関わっているため、数時間制作を休みました。その間、工房には朝早くから大学院生がいて、自らの修了制作に励んでいました。私も午後は制作三昧になりました。「発掘~環景~」の撮影日時が迫る中、焦りがあって胸中穏やかではないのです。そんな中で若いスタッフと昼食をとっていた折、輪状の形態に関する話になりました。彼女の漠然としたイメージに私が思索を加えるカタチになりましたが、偶然にも興味深い話題になったのでした。輪状の形態、つまり「環」はまさに私が今制作中の新作に関係するもので、自分にも関心のあるテーマです。「環」が円と異なるところは中心が見えないところで、外側の輪郭だけが存在する世界と言えます。中心点のある円は収まりのいい落ち着いた形態です。まとまり過ぎて退屈さえ感じられる形態ですが、中心点をなくし、そこにぽっかり穴を空けると、形態は忽ち空虚になります。空虚は見ている者の不安を煽ります。帰結する点がないので、視点が定まらず、「環」をぐるぐる回るように視界が誘導されてしまいます。「環」は出発もなければ終結もない状態です。まとまることのない永遠回帰はニーチェが提唱した哲学にありますが、人間の内面に潜む広漠とした不安に通じます。私たちは終わりのない旅をしていると言えるでしょう。死は肉体的な滅亡であって、終わりを意味するものではないと、誰かが言っていたように記憶しています。「発掘~環景~」にはそんな意味も含まれているのです。制作の合間のちょっとした話題でしたが、単なる作業だけではなく、こんなことを話し合えるのも創作活動の成せる業かもしれません。

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