「幻想の未来」を読み始める

「幻想の未来」は日本教文社が出しているフロイト選集8「宗教論」に含まれている論文です。「幻想の未来」という論文を読みたくなったのは、以前読んだ「フロイト入門」(中山元著 筑摩選書)によるもので、その時のNOTE(ブログ)に私自身が、「晩年のフロイトは宗教批判も厭わない論文を発表して、世間の酷評に晒されました。フロイトが精神分析の立場から人類史を総括したことに、私は興味が尽きません。『幻想の未来』、それに続く『人間モーゼと一神教』という論文が読みたくなりました。近いうちに書店で探してみようと思います。」と書いています。東京で本書を探し当てて、まず「幻想の未来」を読むことにしました。正確な書籍名は「宗教論ー幻想の未来」(フロイト著 吉田正己訳 日本教文社)です。日本での翻訳初版は昭和45年1月なので、文章を読んでいるとやや古い感じを持ちますが、活字の雰囲気と意訳の硬質な感じがとても心地よく、情報として読書をしているというより、活字を目で追う楽しみがあります。フロイトは晩年になって自ら研究してきた精神分析学を文化論に応用して、本書のような論文を発表しています。さらにフロイトがドイツのナチスに当時迫害されていたユダヤ人であることを常に考えていたはずです。ひとつの民族の存亡に関わることも百も承知で、このような宗教論を組み立てたのはどんな心境だったのだろうと思いを馳せてしまいます。ともあれ「幻想の未来」を読んでみることにしました。今回の通勤時間の友は人類史を俯瞰する壮大さをもっています。

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