「発掘~表層~」制作の動機

当初は絵画的な平面作品としてイメージしていた「発掘~表層~」ですが、制作の過程で立体の一部が地表に現れ出た作品としてイメージが固まっていきました。それは彫刻の概念に長年縛られている自分が、たとえ平面に見えるものでも、そこに立体性を嗅ぎつけてしまう癖があるためです。自分の視界に入る全ての物質は空間に存在する立体です。その一部である表面を自分は見ていて、立体としての周囲の状況は想像で補っていると言えます。その想像的補いが彫刻作品の中にあっても不思議ではありません。風景を見るとき私たちはその断片しか見えていないと考えると、その最たる例として遺跡の発掘現場を私は思い浮かべます。遺跡の発掘現場では、土中に埋没した遺構を探りあて、丁寧に土を取り除き、都市の全貌が次第に露わになってきます。予想や想像が具体性を持って現れていく過程に、高揚した気分を味わえるのは私だけではないと思っています。埋没した遺構を表現するテーマは、彫刻家としてデビューした当時から変わっていません。「発掘~表層~」も同じ発想による彫刻作品です。作品が断片的であること、欠如したものであること、想像で補ってほしいこと、作品がもつ世界観を完全に語ることがないこと、それらも「発掘シリーズ」では一貫しています。陶彫は出土品のような様相を呈するので、断片や欠如を表すのに適した素材ではないかと思っているところです。

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