NHK番組「エヴァの長い旅」雑感

先日、何気なく見たNHK番組が印象に残ってしまいました。「エヴァの長い旅~娘に遺すホロコーストの記憶~」という番組でした。取材を受けたユダヤ人のエヴァ・シュロスさんは現在86歳で、15歳の誕生日にポーランドのアウシュビッツ強制収容所に送られた人でした。エヴァさんと母親はそこから奇跡的な生還を果たしましたが、父親と兄は収容所で亡くなっています。エヴァさんの数奇な運命は、「アンネの日記」のアンネ・フランクとの縁によって展開していきます。生還した母親がアンネの父親と再婚したため、エヴァさんと同年齢のアンネは姉妹になるのです。アンネは15歳で亡くなっていましたが、隠れ家で書いた日記が、世界的な反響を得て一躍有名になってしまったのでした。一方、エヴァさんはアウシュビッツ強制収容所でのトラウマに悩まされ続けます。家庭を持っても家族には一切語ることができない心の傷が、やがて娘と溝を作ることになりました。戦後71年目にして漸くエヴァさんは、アウシュビッツ強制収容所に娘と訪ねる決心をして、そこで過去と向き合い、娘との長いわだかまりを乗り超えて、母娘は全てを語ることで共感し合ったのでした。戦争による後遺症がどんな悲劇を齎すのか、エヴァさんという証人の無言の表情からその惨さを知ることが出来ました。ドイツでの非人道的な過ちは決して対岸の火事ではなく、わが国でも他国や他民族に対して犯した罪があります。戦争について考える絶好の機会になった番組放映に感謝です。

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