エディプス・コンプレックスについて

「フロイト入門」(中山元著 筑摩選書)を読み終えたところで、昨日NOTE(ブログ)に書いた、さらに探求したいフロイトの理論が私の脳裏に残っています。それはフロイトの精神分析学の中枢を成すコトバ「エディプス・コンプレックス」のことです。エディプス・コンプレックスとは何か、中断している「夢解釈」にも登場してきて、前にNOTE(ブログ)に書いた記憶があります。ここで改めてフロイトが拘ったエディプス・コンプレックスを取り上げたいと思います。「フロイト入門」の中から文を引用します。「(原始的な大家族は)『すべての女を独り占めにしながら、成長した息子たちを追放する暴力的で嫉妬深い父親』によって統率されると考えた。~略~『父を片づけてしまったあとでは、勝ち残った息子たちがたがいに激しく争い、そのためにその群族が崩壊してしまう』というのである。」これは何を意味するのでしょうか。人類の原初の家族の中で、両親に対する子どもの欲動的葛藤が、即ちエディプス・コンプレックスというわけで、これを克服することによって道徳等を司る超自我が生まれるのです。「フロイトはすべての人類に共通するタブーとして三つのタブーと、それら背後にある三つの欲望を挙げている。~略~これら秘められた三つの欲望とは、父親を殺害すること、すなわち近親の殺害、母親と交わること、すなわち近親相姦、そして死者の肉を食べること、すなわちカニバリズムである。~略~これら三つのタブーを守ることで、共同体は崩壊せずに存続することができるのであり、こうした禁止の力は非常に強いものである。フロイトはそこに強い罪悪感と不安の存在をかぎつけている。そしてそこから社会的な良心と道徳性が生まれると考える。」これがフロイトの精神分析の基礎となる論理であり、人類史まで視野を広げた秩序を持った人間社会の発現と言えます。逆に言えば人間社会は、攻撃欲動や性欲動の抑制であり、例えば宗教がその一翼を担ったと言っても過言ではありません。フロイトが晩年執筆した宗教に関する理論の契機になったものがここにあります。この晩年に書き上げたフロイト理論を自分は読んでみたくて仕方ありません。人間社会の成立を精神分析の立場から論じる方法に、自分の興味関心は高まるばかりです。

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