「社会という『檻』」まとめ

「フロイト入門」(中山元著 筑摩選書)第六章「社会という『檻』」のまとめを行います。「人間は社会の中で生きるかぎり、何らかの形で欲望の充足を抑圧せざるをえなくなる。社会は『檻』となって、人々を監禁し、抑圧する。そのため社会で生きる人々の間にはつねに、この檻を破壊したいという破壊欲動が存在している。~略~社会という『檻』に閉じ込められた人間たちは、ニーチェが指摘したように、檻の格子に体当たりして自己を傷つけるしかないのである。人間は良心というものを発明し、自己の内部に檻を作りだしてしまったからである。この罰する審級としての超自我は、自我を罰し、ときにはその人を破壊してしまうこともあるのである。」このような社会の檻による欲望の抑圧を考えた時に、フロイトは人類史を遡り、社会を形成するに至った動機を解明しようとします。「ヒトが猿から進化して人類になるために必要であった条件として、直立歩行をあげている。直立歩行をすることによって何が可能になるだろうか。それはまず手を使うことができるということである。~略~そして労働する人間は、他者と協力することの意味をみいだした。孤立していた人間では生産性が低いこと、そして他者と協力することによって、多くの富を生みだすことができることは、原始時代からすでに明らかになっていたことである。~略~それまで大地の匂いを嗅いでいた人間たちは、その匂いの刺激よりも、眼でみる異性の美しさという視覚的な刺激に強く反応するようになったとフロイトは考える。~略~フロイトは直立歩行して性器が他者のまなざしに暴露されたことに、別の意味で革命的な変化の原因をみいだしている。これは羞恥心の始まりであるとともに、他者のまなざしを意識し、自分のまなざしで他者を愛撫する行為の始まりだった。人間の愛情関係がこうして育まれ、家族が形成されるのである。」これ以降の論点は、宗教の発生や戦争が起こる根拠を、心理学的分析によって挙げています。この分析は私個人として興味関心が沸く対象なので、稿を改めたいと思います。

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