渋谷の「ラファエル前派展」

Bunkamuraザ・ミュージアムは遅い時間まで開館しているので、勤務時間終了で職場を出て橫浜から渋谷まで電車の乗り継ぎがうまくいけば、何とか開館時間に間に合います。昼間働いている者にとっては仕事帰りに立ち寄れる大変便利な美術館です。「英国の夢 ラファエル前派展」は、リバプール国立美術館の所蔵品で構成された19世紀イギリスの具象絵画が堪能できる展覧会でした。ラファエル前派とは何か、イタリアの巨匠ラファエロ・サンツィオの絵画に範を執る古典主義的な教育法に反旗を翻し、ラファエロ以前の絵画に回帰すべきであるという主張が、ラファエロ前派という一団を生んだようです。つまり復古主義です。それまでイギリスのロイヤル・アカデミーで行っていたアカデミズム教育に対する不満が、ミレイ、ハント、ロセッティというラファエロ前派の画家を輩出させますが、主題が過去に向かったことやミレイやハントが伝統的なロイヤル・アカデミー展に出品し続けたことが、アカデミーに対するラファエロ前派の微妙な立場を物語っています。変革を求めた絵画が、依然としてロマン主義の範疇に留まっていることが、イギリス社会固有の特徴ではなかろうかと思うのですが、どうでしょうか。フランスの印象派とは違う方向にいったことが私には不思議に思えます。今回の出品作品はいずれも丁寧に仕上げられていて、風景や田園の生活を丹念に描いた作品が多く、抒情たっぷりに人々の生活を浮き彫りにしていて、会場を眺めて回りながら、こんな世界観もあっていいのではないかと私個人として思いました。仕事帰りに疲れた心で絵画を味わうとしたら、色彩の情緒に憩いを求めることもあって、現代日本からするとイギリスの風景は非日常そのものだと感じました。

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