映画「放浪の画家ピロスマニ」について
2016年 2月 4日 木曜日
1969年に制作されたグルジア(ジョージア)の映画「放浪の画家ピロスマニ」を久しぶりに観てきました。私は20代の頃から数回に亘って本作を観ています。そのつど印象が異なり、ピロスマニという孤高の画家にずっと魅力を感じています。ゴッホは職業を転々とし、父のような牧師にもなれず、生前絵が売れなかったことで有名ですが、ピロスマニは酒場を回り、食糧や酒と引き替えに看板や壁に掛ける絵を描いていたところは、ゴッホとは境遇的には違うかもしれません。ただ、若い頃の自分はピロスマニにゴッホと似た生涯を感じ取っていました。ピロスマニは一時中央の画壇に注目されたときもあったのですが、晩年は貧困の中で亡くなり、共同墓地に埋葬されたようです。2人とも己の絵画の素晴らしさを信じて疑わなかったことが似ていると思った要素でしょうか。ピロスマニの絵画はグルジアの身近な風習や歴史、人や動物をテーマにしています。素朴派に通じる世界ですが、イコンのような正面性の強い絵は、独特な趣があって一目見てピロスマニの絵と分かります。映画のそれぞれのシーンもピロスマニの絵のような画面構成をしていて、制作当初より40年経ってもその美しさは変わりません。広い草原に一軒だけある乳製品を売る店が、まさに絵画そのものです。村の居酒屋で歌い踊るフランス人女優に恋心を抱くピロスマニが画面に映し出されます。真意のほどはわかりませんが、そのモチーフが「100万本のバラ」という歌になったというエピソードもあります。「私の絵はグルジアには必要ない。なぜならピロスマニがいるからだ。」とピカソが言ったそうですが、映画そのものも時代を経てもなお新鮮な感動があります。
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