「ヒステリー研究」について

現在読んでいる「フロイト入門」(中山元著 筑摩選書)の第一章「精神分析の誕生」の中で、大きく頁を割いているのが「ヒステリー研究」についての部分です。「ヒステリー研究」はフロイトとブロイヤーの共著で、多くの症例を取り上げています。まずブロイヤーの診断を本文から引用します。「(ブロイヤーは)ヒステリーの症状が生まれる原因を考察して、それを人格の分裂に求めた。~略~ブロイヤーはこう結論する。『周知の古典的な症例において、二重意識として注目されるあの意識の分裂が、すべてのヒステリーの根本的な原因となっている。この意識の分裂の傾向と、われわれが〈類催眠状態〉という名のもとに呼ぼうとしている異常な意識状態を出現させる傾向こそが、神経症の根本現象なのである。』」これに対してフロイトが異議を述べています。「(フロイトは)ヒステリーの素因を、心が複数の人格に分裂していることに求めるべきではないということである。~略~神経症の直接の原因が心的な外傷であることを認めながらも、それがたんに『病的な』ものと考えるのではなく、『性的な』性格のものと考えるべきだということである。」さらにフロイトが追加したことを引用します。「(フロイトは)心の内部に、意識的な領域とは別に独立した無意識の領域が形成されると考えた。いわば心の中に腫瘍のような異物が形成されていると考えたのである」分裂ではないと異議を唱えたフロイトが「手当て」という治療方法を実践しています。「フロイトは、患者の心的な抵抗をみいだしたのである。『患者のうちに、病因となる表象を意識化させること(回想すること)に抵抗する心的な力があるのであり、私は心的な作業によってその心的な力を克服せねばならない』と考えるようになったのである。こうしてフロイトは、ヒステリーを発生させているのは、ブロイヤーの考えたように、意識の分裂ではなく、患者のうちにある『抵抗』する力であり、そして観念を想起することにたいする『防衛』であると考えるようになったわけである。~略~フロイトがそのためにとくに利用したのが、患者の額に手をあてて、自由に連想させることだった。」自由連想法による治療がこうして始まったのでした。本書はその症例をいろいろ掲載していますが、次の機会に第二章のまとめを行います。

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