空間に置かれた唯一無二

展覧会に行くと広い空間の中にたったひとつだけ彫刻が置かれていて、何と贅沢な展覧会だろうと思うことがあります。昨年末に出かけた「フリオ・ゴンザレス展」でも最初の空間に置かれた「ダフネ」は広い空間を独り占めしていた印象がありました。後で確認すると横に小品が置かれていたようですが、自分には「ダフネ」が広い空間の中で唯一無二の存在のように思えました。茶の湯の伝統のように、日本には余分な要素を切り捨て、簡潔の美を愛でる意識があります。そうした空間に置かれた唯一無二な芸術品は、その物質だけを鑑賞するのではなく、周囲の空気を取り込んだ場を鑑賞するものだと思っています。何かが置かれることによって、その空間が変容すると言えばいいのでしょうか。最小の物質で最大の空間を演出するというのが、自分が理想とする彫刻の在り方と考えていて、作品がどこに、どのように設置されるかが大きなポイントです。私が東京銀座のギャラリーせいほうで10年間も個展をさせていただいている理由は、ギャラリーの白い壁と広い空間にあります。銀座にあってこれだけ大きな空間を有している画廊は他に類を見ません。彫刻作品が纏う空気感がどのくらいの空間を求めているのか、作品の表現力によって違ってきます。自分は自作を大きな空間に唯一無二の存在として置いてみたい、そんなスケールを考えながら制作に励んでいるところです。

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