「フロイト入門」読み始める
2016年 1月 13日 水曜日
現在読んでいる「夢解釈」(フロイト著 金関猛訳 中央公論新社)を中断して、解説書を読むことにしました。かつてハイデガーやニーチェの哲学書を読んでいた時も、途中で解説書に手を出して内容を整理しました。今回読み始めた書籍は、「夢解釈」の解説書とはちょっとニュアンスが違います。「フロイト入門」(中山元著 筑摩選書)は「夢解釈」だけでなく、フロイトが発明した精神分析という分野やそれを取り巻くさまざまな心理学的理論を網羅していて、フロイトの歴史に残る業績全体を解説しているのです。書店の棚から本書を取り出して最初の頁を捲った時、ぐいと引き寄せられた文面が頭に残って、暫く書店をウロウロした後、また棚から取り出して即刻購入と相成ったのでした。自分が引き寄せられた文面は、人類史にあってそれまでの定説をひっくり返す革命が3つあったことを述べた箇所です。「第一の革命は天文学の分野で、コペルニクスの地動説によって引き起こされた。」人間が住む世界を中心に天体が回っているとそれまで信じられていたものが、実は地球は巨大な宇宙系の小さな一部に過ぎないという説です。「第二の革命は、生物学の分野で、ダーウィンの進化論によって引き起こされた。」人間は神によって神の姿を象って作られたと信じられていたものが、実は人間は猿から進化した動物の一種に過ぎないという説です。人間は何と高慢で自惚れの強い生き物だろうと感じてしまいます。「第三の革命が、フロイトの精神分析によるものだった。」これは理性の信頼を根底から覆すもので、これが近代の啓蒙の精神やそれを裏付けた哲学さえも揺るがせ、人間の心の病の治癒に進んでいくフロイトの理論に、今後の展開を期待させるものがあります。「フロイト入門」の導入部は、自分のような読者にはうってつけのもので、忽ちフロイトの世界観に興味関心を覚えてしまいました。「夢解釈」を通して知りえたフロイトを、その人間性や業績に迫る本書を手がかりに、もっと深く洞察できたらいいなぁと思っています。通勤の友としては、本書は「夢解釈」ほど気難しくなさそうなので、肩の力を抜いて読んでいこうと思います。