「夢の仕事」(f)まとめ

「夢解釈」(フロイト著 金関猛訳 中央公論新社)第六章「夢の仕事」の(f)「不条理な夢、夢における知的な働き」のまとめを行います。「夢解釈」のような大著はなかなか頁を捲ることができず、一度離れると気持を戻すのが大変です。今まで読んでいる内容がどんなものだったか、思い出すだけでも労力を使います。年末年始は読書に向くことができず、仕事が始まって通勤時間が確保されてから、漸く頁を捲った次第です。気持が乗れば職場の休憩時間に読むこともできますが、「夢解釈」はそんな気構えでは内容が頭に入ってきません。遅ればせながら「夢解釈」の再挑戦を始めることにしました。不条理な夢という副題は、改めて言うまでもなく、今まで考察してきた夢は全て不条理と考えられ、夢内容においては頻繁に出会ってきたように思います。文面の冒頭にありますが、不条理がどこに由来し、何を意味するのかの探求を先延ばしにできないと書かれていました。ここでも今までの例に漏れず、多くの事例が列挙されており、論点を浮き彫りにしています。その中から、夢が不条理なものにされる契機が表れた部分を引用します。「夢が不条理なものにされるのは、夢の想念の内容に含まれるある一要素として『それは馬鹿げている』という判断が現れるとき、つまり、夢見る者の無意識的なある一本の想念の筋道が総じて批判や嘲りという動機から生じるときである。したがって、不条理は夢の仕事が異議を描出するための一手段となる。それは、夢の想念と夢内容とのあいだにおける素材の関係の逆転や、運動機能の抑止感の利用がそのための手段となるのと同じことだ。しかし、夢の不条理は単なる『否』と訳すべきではない。それは異議を唱えるとともに、また嘲弄し、嘲笑するという夢の想念の気分再現する。こうした意図によってのみ、夢の仕事は馬鹿げた事柄をもたらす。夢の仕事はここでもまた潜在的内容の一部を顕在的形式に変えるのである。」さらに健康的な人の見る夢にも言及した箇所を引用します。「夢の想念はー少なくとも精神的に健康な人間の夢について言えばーけっして不条理ではないという方向で、夢の不条理という問題を解決した。つまり、夢の仕事が、その表現形式を通じて夢の想念における批判、嘲り、嘲弄を描き出す場合、それは不条理な夢や、いくつかの不条理な要素をともなう夢を作り出すのである。」

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