作品の題名に纏わること

そろそろ新作に題名をつけなければ不便を感じるようになりました。作品にとって題名とは何か、各作家によって見解はさまざまですが、自分はイメージした原点に戻り、可能な限り簡潔なコトバを選んでいます。時には造語にして作品のイメージが伝えられるようにしています。自分が関心のある作家の題名を考えると、哲学的思索の表明や過去在住した西欧への望郷、宗教の寓話から得たエピソード等があって、作品と作者の関係性が見えてきます。例えば若林奮先生。自分と対象物の間にある関係を「振動尺」という独自の計測器で捉えて作品化しています。空間に対する一種の哲学です。次に保田春彦先生。「階段のある広場」は、保田先生が昔住んだイタリアの古い都市を抽象化したもので、これは西欧の都市構造に対する彫刻的解釈と言えます。かつての時間を取り戻すような望郷の念も感じさせます。最後に池田宗弘先生。「ドンキホーテ」は、スペインの寓話を一部切り取って、人物や馬を巧みに組み合わせ、軽妙洒脱な風刺画のような彫刻を作っています。池田先生にはキリスト教徒が巡礼路を歩く旅人のシリーズがあって、文学性と宗教性に裏打ちされた世界観が題名に表されている作品が少なくありません。そんな題名にどんな関わりを持たせるのかは、作家本人の考え方が反映しています。題名をナンバーのみにして、敢えてコトバを持ち込まない作家がいます。その逆もあって題名に作品の真意を語らせる作家もいます。謎めいた題名は何を意味するのか、そんなことをあれこれ考えるのも愉快です。しかしながら私は自作の題名には、やはり何の思索的意図をせずに簡潔さを求めていくことにしたいと考えます。近いうちに題名をつけていかなければならないと思っています。

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