上野の「始皇帝と大兵馬俑展」

中国の兵馬俑の展覧会を以前にも私は見ています。兵馬俑は過去数回来日しているのではないでしょうか。ただし、現在、東京上野で開催されている「始皇帝と大兵馬俑展」のような大規模な展示は初めてで、特に今回の展覧会のために模刻された兵馬俑の多さに驚きました。東京国立博物館平成館の広い展示スペースにはオリジナルの後ろに模刻された兵馬俑が整然と並び、壮観な演出になっていました。実物の兵馬俑は見応えがありました。これを作らせたのは秦の始皇帝で、図録によると「歴代の王さえも凌ぐ偉業を成し遂げた政は、それまでの王を超越する皇帝という地位を創設し、みずから中国で初代の皇帝『始皇帝』となった。始皇帝は統一をより実体化させるために、それまで国によって異なっていた度量衡(長さ・体積・重さの基準)、漢字の形などさまざまなものを統一し、全国に浸透させようとした。また、有力な貴族や功臣に王が一定の領地を与えて統治を委ねる従来の統治方法を改め、地方には中央から官僚を派遣して、皇帝の意思を法令によって隅々にまで実現させるようにした。」とありました。始皇帝が大陸の統一を実現した組織力には驚くばかりです。兵馬俑の制作動機として「写実表現は、兵馬俑1体ずつの造形から軍隊全体の陣容、さらに宮殿周辺にあった厩舎などの諸施設にいたるまで徹頭徹尾求められた。そこには皇帝中心の秩序を保った完全なる世界の写しに、始皇帝が死後も永遠に君臨し続けようとした願望をかいま見ることができる。」と図録にあります。死後の世界も始皇帝が君臨するために地下に埋めた夥しい造形物に、中国の歴史のスケールを感じ取り、目を見張るものがありました。兵馬俑の陶彫としての感想も抱きましたが、これは後日改めます。

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