「花器〈ブドウとカタツムリ〉」感想

先日、東京のパナソニック汐留ミュージアムで開催されていた「アール・ヌーヴォーのガラス」展を見に行って、とりわけ印象に残った作品が「花器〈ブドウとカタツムリ〉」でした。図録によると「無色ガラスに黄色と赤味を帯びたオレンジ色の粉末ガラスを封入し、その上に、濃青色ガラス、白と錆赤、紫がかった赤、青緑、濃青色、黄色の粉末ガラスを部分的に重ねて溶着している。酸の腐食によるさまざまな度合いの浮彫で表した濃青色のブドウの実の部分には、いくつかの小さな透明の玉飾りを溶着し、側面には二匹のリンゴマイマイ(エスカルゴ)を両側に一匹ずつ、あらかじめ形づくったものを溶着し、エングレーヴィングによる彫刻を加えて仕上げている。」という技法解説があって、手間暇かけた1点制作であったことが伺えます。職人の計算と偶然の融合が、鑑賞する側を魅了し、いつまでも見飽きない世界を創出させています。展示されていたガラス越しに息がかかるほど見惚れていた私は、色彩と浮彫の織り成す妙をたっぷり味わっていました。当作品はA・ベルジェのデザインによりドーム兄弟が1904年に制作したもので、リエージュ万国博覧会に出品されたと記述がありました。

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