練馬の「舟越保武彫刻展」

既に終わっている展覧会を取り上げて恐縮ですが、先日練馬区美術館で開催していた「舟越保武彫刻展 まなざしの向こうに」に行ってきました。ギャラリーせいほうでの私の個展の前週が「舟越保武デッサン展」だったので、その卓抜した素描に触れ、同美術館の彫刻展には必ず行こうと決めていたのでした。彫刻家舟越保武は自分にとって大変存在感がある巨匠です。キリスト教関連の彫刻作品が、私の師匠である池田宗弘先生に引き継がれていることへの影響もあります。私自身は宗教観をテーマにしていませんが、特定宗教のもつ哲学や祈りの深さは理解しています。長崎県に行った時に「長崎26殉教者記念像」を見てきました。外壁から突き出た聖人たちのもつ静謐さに心打たれました。今回の展覧会でもそのデッサンや雛型が展示されていました。「病醜のダミアン」の展示もありました。ハワイでハンセン病患者に寄り添ったベルギー人神父の、病気に冒された容貌と崇高な精神が相まって、彫像には清々しい空気が漂っていました。「原の城」は今まで何度も見ている馴染みのある彫刻です。初めて「原の城」を見た時は深い感動がありました。聖母や女性像を石彫した優美な作品群もありました。改めて舟越ワールドに触れて、現代彫刻界を支えてきた人の表現力の凄さや巧みさを確認しました。前のNOTE(ブログ)にも書きましたが、私が美術館を訪れた日は大変混雑していて、特にご高齢の方々が熱心に彫刻を見ている様子を見るにつけ、彫刻という表現が漸く社会的にも評価を得たのかなぁと思っています。もちろん舟越保武の彫刻だから、その知名度と関心度で群を抜いているのもわかります。それでも彫刻が身近になってくれれば、これほど有り難いことはありません。

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