個展に関する複雑な心境
2015年 7月 24日 金曜日
10年前に東京銀座のギャラリーせいほうの田中さんに認められて、人生初の個展を開催しました。その時は有頂天になって、彫刻家としての大きな一歩を踏み出しました。このチャンスを手放すまいと毎年奮闘し、この10年間に10回目の個展が出来ました。その間、創作活動に邁進するだけの健康を保ち続けられたのが幸運と言えます。今後も継続したい思いで一杯です。そんな気持ちと裏腹に個展に関する複雑な心境もあります。個展を企画していただいている幸せがあってこその心境ですが、最初の個展からずっと思っているものです。自分自身、展示している作品に満足を覚えるのは、搬入が終わり、作品を組み立て、照明を設定して、いよいよ会場が出来上がった瞬間だけなのです。残りの日程は次第に息苦しさが出てきます。非日常空間の中で自分の作品と自分が対峙しているのが辛いと感じます。ギャラリーせいほうの広く白い空間は、何とも清々しい爽やかな場所で、入口のガラスを開けると、人はやや緊張した面持ちになります。鑑賞に訪れた人々には、なかなか理解できないかもしれませんが、そんな特別な空間で内面を吐露している自分の作品は、自分にとっては複雑で厳しい存在なのです。工房で見る作品とギャラリーせいほうで見る作品は、同じモノなのに違って見えます。作品にとってはギャラリーは演出された晴れ舞台で、作者は作品が万人の眼に曝されるのを見届ける裏方と言えます。その裏方が見つめる作品の晴れ舞台に、力量の及ばぬ箇所を見て、複雑な心境を抱いても決して不思議はないでしょう。個展に関する複雑な思いに駆られることは今後もありますが、それでも個展をやっていきたい意志は変わるものではありません。
関連する投稿
- 窯とのつき合い 陶彫を始めた頃は、作業場も付帯設備としてあった陶芸用の窯もすべて借り物でした。その時は、自分の好きな時間に作業をして窯入れをすることは出来ませんでした。でも作業場を借りていた時期が長くて、ギャラリー […]
- HPのExhibitionリニューアル ホームページのリニューアルを進めています。初めにExhibitionをリニューアルしました。Exhibitionはギャラリーせいほうでの個展の状況を記録したページです。毎年個展を開催させていただいて […]
- 内向きな制作・外向きな発表 創作は工房に籠もって一人でやっています。若い世代が工房に出入りしていても創作活動は常に一人です。共同制作はやったことがないし、もちろん今まで組織を作ることは皆無でした。公務員としての自分と、彫刻家と […]
- 16回目の個展開催の7月 7月になりました。昨年のNOTE(ブログ)を見ていると「15回目の個展開催の7月」というタイトルが7月1日にありました。昨年に倣って今年はタイトルを16回目に変えました。昨年、私はまだ校長職にあって […]
- 12月初日に喪中はがきを出す 12月になりました。まずは今年の4月に母が他界したため、喪中はがきを出すことにしました。今日は仕事から帰ってから喪中はがきの宛名印刷を行っていました。私は例年RECORDの絵柄を利用して積極的に年賀 […]
Tags: ギャラリー, 作品, 個展, 創作
The entry '個展に関する複雑な心境' was posted
on 7月 24th, 2015
and last modified on 7月 24th, 2015 and is filed under note.
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.
Both comments and pings are currently closed.