六本木の「マグリット展」

20世紀を代表するシュルレアリスムの巨匠ルネ・マグリットは、自分にとって馴染みのある芸術家です。十数年前の日本での大がかりな展覧会も見た記憶があります。今回は混雑を避けて金曜日の夜の時間帯に家内と六本木の国立新美術館に出かけました。ゆっくりと鑑賞できて良かったと思いました。マグリットはシュルレアリスムの古典とも言うべき画家で、見慣れた画風であるにも関わらず、やはり面白さが伝わってきました。その中でもニューヨーク近代美術館からやってきた「光の帝国Ⅱ」の面白さを今回改めて確認しました。マグリット自身が語っているコトバが図録に掲載されていました。「この夜と昼との喚起は、私たちを驚かせ、魅了するような力を帯びているように、私には思われます。私はこの力を、詩と呼びます。この喚起がこのような詩的な力を持っていると私が信じているのは、何と言っても、私が常に、夜と昼とに対して最大限の関心を抱いているからです。~以下略~」街灯が灯る夜の風景に、白い雲が浮かぶ青空が同じ画面に共存している風景画は、綿密に計算されて描かれているからこそ不思議な説得力があるように思います。正確な具象絵画ではあるけれど、どこか超自然な世界が、見る人を魅了するシュルレアリスムの王道が、そこにありました。

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