古都で現代美術を考えた日

今月の初旬に関西に出張で行ってきました。京都にある京都国立近代美術館で開催していた「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」は現代の生活と美術の関わりを改めて考える機会になりました。現代美術というカテゴリはあるにしても、自分は現代作られている作品は全て現代美術ではないかと思っています。ならば現代という時代が作らせている美術を定義するとすれば、現代美術とは、現代という時代を美術を媒体にして表現する行為ではないかと思っているのです。これは前時代的な額縁に納まっている美術ではなく、現代とはこういうものだと美術を窓口にして作家が提示しているものだとも言えます。その中で自分はドイツ人造形作家のゲルハルト・リヒターの数点の絵画に注目しました。フォト・ペインティングという技法で名を成した作家ですが、写真のブレやボケを絵画にすることによって生じる不思議な感覚が印象に残ります。突き放した絵画表現と言うべきか、極私的な写真表現と言うべきか、誰もが知る写真特有な画像が絵画に模されて、その両媒体の関係性を鑑賞者に提示されていて、その面白みや可笑しさが伝わってくると自分は解釈しています。現在生きていて、私たちを取り巻いていて、皆が共有している現象が、視点を変えることで楽しくなって豊かな世界に導いてくれるもの、これが現代美術かもしれないと思っています。そこに難解なものは微塵も無いと思います。

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