やり残した造形

以前のNOTE(ブログ)に書いた記憶がありますが、夢の中で自分はもうひとつの人生を生きて、そこでも彫刻を作っているのです。その彫刻は人体を極限まで削り取った具象彫刻です。ジャコメッティとはちょっと違い、全体が細くなっているわけではありません。肩から手にかけて途中の量感がないのです。脚も膝から下がなく、足首と足がそこに在るといった具合です。ギリシャ・ローマ彫刻で失われた部分が、寧ろ鑑賞者に想像する面白さを与え、より広い空間を感じさせるのに似ています。途中の量感を失った人体彫刻は単体では立てません。そこで人体を支える格子で出来た壁があるのです。壁に寄り添うように部分しか残っていない人体があるといった風情です。素材は鉄の廃材です。既成の部品だった鉄材を溶接で組み合わせ、ボロボロになった人体が辛うじて存在している彫刻です。夢の中で若くなった自分は、どこまで鉄を削ったら人体でなくなってしまうのか、グラインダーで削り、また溶接で繋ぎとめる作業を繰り返しています。鉄による塑造は、やがて単体の人体から集団による群像に広がっていきます。これはどういうことでしょうか。自分はどうやらもう一度学生をやり直しているようです。自分の学生時代は粘土による人体塑造をやっていました。考えると自分は人体彫刻をやり切った感じが持てず、中途半端なまま古代都市の構造を取り入れて作品を抽象化していったのかもしれません。やり残した造形が今になって夢の中で現れてきているのではないかと考えています。いつか自分の過去に決着をつけられる時がやってくるのでしょうか。

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