「みちのくの仏像」展

東日本大震災で被災した東北地方の寺院に伝わる貴重な仏像が、東京国立博物館で見られると知って、先週金曜日の夜に出かけていきました。同展に出品されていた仏像で、まず眼を引いたのは岩手県天台寺から来た聖観音菩薩像です。鉈彫と言われる荒々しい鑿跡を残した表現で、顔や両腕は滑らかな処理がされているため、これは未完成ではないことがわかります。図録によると、鉈彫のような鑿目をはっきりと刻む表現の背景に、仏を刻む音を聴くことで功徳が得られるとする経典の記述があると掲載されていました。今まで鉈彫と言うと聖なる樹木より神仏が現れ出る表現とする解釈が行われてきたようですが、鑿の音を聴くことに意味を見いだすことが意外でした。東北の仏像と言うと当時都のあった京都から伝わった像で、どちらかというと素朴なイメージがつき纏いますが、実物を見ると決して鄙びた表現ではなく、堂々とした豊かな仏像群に眼が奪われました。円空の仏像が出品されていましたが、彫刻を略するいつもの円空流ではなく、細部まで作り込まれたもので伝統的な形式に則ったものでした。さまざまな印象を抱いた「みちのくの仏像」展でしたが、自分に強烈な印象を残した十二神将立像4点は、機会があればまた取り上げたいと思います。

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