竹橋の「高松次郎ミステリーズ」展

週末は制作工程に追われていて美術館に行けないことがあります。それでも見たい展覧会がある時は、金曜の夜間延長時間帯に行くようにしています。先週金曜日に勤務時間が終わった後で東京竹橋まで出かけ、国立近代美術館で開催中の「高松次郎ミステリーズ」展を見てきました。昨年、「赤瀬川原平の芸術論展」を千葉市美術館に見に行った際、赤瀬川氏と同時期に活躍した前衛芸術家の展覧会をどうしても見ておかなくてはならないと思ったのでした。1960年代に立ち上げた「ハイレッド・センター」は「ハイ」(高松)「レッド}(赤瀬川)「センター」(中西夏之)という3人で構成された前衛集団でした。故高松次郎は人間の認識を問いかけた作品で知られた作家です。本人は「人間は結局、自分の外にあるものごとを十全に捉えることはできない。ものごとは人間の偏った認識によって汚されている。」と語っていて、その延長線上に有名な「影№273」や遠近法を問題視した「遠近法の椅子とテーブル」があります。「影を『影だけを』人工的に作ることによって、ぼくはまず、この実体の世界の消却から始めました。『それはあくまでも消却=不在化であって超越ではありません。』この世界の中で『完璧性』を追求するために、それは最も素朴でストレートな方法だろうと思います。」次に図録解説による影と遠近法の関係性について書かれた箇所を引用します。「絵画の線遠近法の場合、地平線上の消失点に近く、キャンバス面から遠いほど、モノは小さく描かれます。~略~しかし影の場合はどうでしょう。~略~反対に光源から遠く、キャンバス面に近いほど、ものの影は小さく『というより等物大に』なります。このように、絵画の遠近法のたとえをあてはめてみる時、影は逆遠近法的な性質を持っているということができます。」昨年よりモノの存在を考えている自分にとっては面白い展覧会でした。

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