習いと慣れについて

家内が胡弓や三味線演奏で「○○さんは一所懸命なので漸く技巧が身について上手くなってきた」とか「私もやっと余裕が生まれてきた」と言っています。演奏や歌唱はそのつど技巧を習い、練習を繰り返して、漸く人前で演奏できるようになるものだと思っています。聴くに堪えないと言うのは練習が不完全であることを意味し、また逆に演奏に余裕があるのは場数というか、精神的な慣れによるもので、そこに強弱や抑揚という楽想が生まれます。聴く快さはそこから現れてきます。美術の世界でも同じではないかと思うことがあります。創作行為が楽器演奏と異なるところは、慣れが必ずしも感動を生むモノではなく、寧ろ拙い技法でも表現したい思いが強烈に伝わるような精神性を感じると、鑑賞者の心を捉えるところです。それを承知の上で、絵の具や素材を思うように扱える技量を作品から感じられると、その表現の深さに眼が奪われます。習うより慣れろというのは、ただ慣れるだけではなく、主張する内容がそれに見合っていることで、完全燃焼する作品世界が生まれることを言うのではないかと思います。「技量は内容を語る」という台詞は自分が学生の頃に先輩が言っていたコトバです。今になって思い出したツボに落ちるコトバのひとつだと認識しています。

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