「善財童子立像」の印象
2014年 11月 25日 火曜日
上野の東京国立博物館で開催中の「日本国宝展」では印象に残った作品が多く、まず何を取上げようか迷いましたが、最後の部屋に展示されていた快慶による仏像を取上げることにしました。善財童子立像と仏陀波利立像の彩色木彫の2点です。そのうち振り向きながら合掌する善財童子立像が、何とも愛らしくて好きになりました。平成25年に国宝に指定されたようで、彫刻分野では最も新しい国宝です。奈良県の安部文殊院が蔵している仏像ですが、特徴的なフォルムであるためポスターに採用されています。快慶と言えば鎌倉時代を代表する彫刻家で、その具象表現は西欧彫刻にも通じ、自分が仏像彫刻理解の第一歩として崇めた一人です。仏像の表情や筋肉のつき方が彫塑を学ぶ学生に分かり易かったし、鎌倉時代の仏像はバロックにも似た要素があって親しみを感じていました。日本人でありながら大学での彫刻実習は西欧の具象表現を学ぶことにあって、仏像は西欧彫刻の後にやってきた自主研究のようなモノなのです。だから善財童子立像や仏陀波利立像の内に西欧を見取って親しみを感じるというわけです。善財童子立像の愛らしさが印象に残ったのも、或いは自分の造形キャリアから由来すると言っても過言ではないと思います。
関連する投稿
- 板橋の「深井隆ー物語の庭ー」展 昨日、東京板橋にある板橋区立美術館で開催中の「深井隆ー物語の庭ー」展に行ってきました。板橋区立美術館は過去に数回訪れたことのある美術館で、規模は大きくないけれど美しい空間をもつ美術館です。ただし、私 […]
- 白金台の「ブラジル先住民の椅子」展 東京白金台にある東京都庭園美術館は、アールデコ様式の装飾が美しい美術館で、そこで展示される作品と周囲の装飾がどのような関係性を持つか、それも楽しみのひとつとして味わえる稀有な空間を有しています。以前 […]
- 年休取得して亡母の用事&美術館へ 今日は職場を休んで亡母の用事を済ませてきました。母は東京都大田区蒲田に生まれています。そのため戸籍謄本を取るのに大田区役所に行く必要があり、家内と蒲田駅前にある大田区役所に自家用車で行ってきたのでし […]
- 葉山の「砂澤ビッキ展」 先日、神奈川県立近代美術館葉山で開催されている「砂澤ビッキ展」に行ってきました。副題に「木魂を彫る」とあって、生前巨木に挑んだアイヌ人彫刻家の痕跡を辿ることが出来る優れた展覧会でした。私は導入の部屋 […]
- 「無著菩薩・世親菩薩像」について 東京上野の国立博物館で開催されている「運慶展」のほぼ中央の大きな部屋に「無著菩薩・世親菩薩像」があります。像の前に立つと惚れ惚れするような写実を極めた精神性が感じられて、まるで像が生きているような錯 […]
Tags: 展覧会, 彫刻, 木彫
The entry '「善財童子立像」の印象' was posted
on 11月 25th, 2014
and last modified on 12月 5th, 2014 and is filed under note.
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.
Both comments and pings are currently closed.