ココシュカを巡って…

国立新美術館で開催中の「チューリヒ美術館展」でオスカー・ココシュカの油彩画を見て、自分は若かりし頃に過ごしたウィーン時代を思い出しました。当時ココシュカは自分にとって馴染みの薄い画家であるばかりか、クリムトやシーレのように訴えかける要素が少ない画家と思っていました。それが突如として激しく自分の心情に迫ってきて、忽ちココシュカの世界に巻き込まれてしまったのでした。ウィーンの国立ギャラリーを訪ねた時の出来事で、それは知識でも思索でもなく突然やってきた嵐のような感覚でした。荒いタッチが幾重にも重なった表現、そこから何か得体の知れないモノを追求するような、また何かを抉り出すような動勢を自分は感じ取りました。その場で立ち尽くし、どのくらい時が経ったのか記憶にないくらいです。自分にとって新しい芸術表現の理解とは、こんなところから始まるのかなぁと思っています。それは時代の先端を行く表現ではなく、あくまでも自分にとって新しい価値を持つ表現のことです。時代的には過去の表現であっても、自分にとって漸く理解できた表現がココシュカだったわけです。「チューリヒ美術館展」でココシュカに出会った時は懐かしさを覚えました。ココシュカという日本では知られていない巨匠を巡って昔の自分の心が甦ってきたのです。

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