優れた女流彫刻家を惜しむ

今日職場にあった新聞に彫刻家宮脇愛子さんが逝去された記事があり、とても残念に思いました。84歳は平均寿命からすれば致し方なしと思いますが、宮脇さんの爽快感のある作品からすると、年齢を感じさせない溌剌とした表現に溢れていて、作者はもうそんな年齢だったのかと改めて思い返した次第です。確か宮脇さんはギャラリーせいほうでも個展をされていました。「うつろひ」というステンレスワイヤを使った軽やかで緊張感のある野外作品は、いろいろな国で展示され、自分も各地の美術館にある野外展示を見ています。宮脇さんと同じように優れた表現力をもった女流彫刻家に多田美波さんがいました。多田さんも今年の3月に89歳で逝去されていて、その時も残念に思いました。多田さんは彫刻の森美術館で大きな展覧会をされていて、自分はそれを見た後で多田ワールドの印象に囚われていたので尚更強く無念を感じたのでした。宮脇さんや多田さんは自分にとって憧れの現代彫刻家でした。ステンレスという現代の素材を駆使して都市空間に躍り出た作品は、軽快で切れ味が鋭く、しかも堅牢な造形に支えられたものでした。素材は違えど自分も生涯を通して彫刻表現の何たるかを思索し、実践していきたいと思っています。

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