「床に鉋をかける人々」

先日見に行った国立新美術館で開催中の「オルセー美術館展」。全体的な感想はNOTE(ブログ)に既に書いてありますが、いくつかの作品が気になっていたので、改めて個々の作品を取り上げてみたいと思います。表題にした「床に鉋をかける人々」はギュスターヴ・カイユボットが1875年に描いた油彩で、3人の筋骨逞しい労働者が上半身裸で、床に鉋をかけている場面を俯瞰的に表した作品です。以前ブリジストン美術館で「カイユボット展」がありました。その時は「床に鉋をかける人々」の出品はなく残念に思っていましたが、今回はオリジナルを見ることが出来て満足感を覚えました。自分はどこかの図版で「床に鉋をかける人々」を見ていて不思議に惹きつけられたのでした。光の美しさ、遠近感の奇抜さ、それでいて日常の労働に見られる仕草等々、何が自分の感情の襞に引っかかったのかうまく説明できませんが、自分の印象に残る絵画のひとつであることには間違いありません。オリジナルが見れたという嬉しさは、それだけでここに来てよかったと思えるもので、他の歴史に残る名作の数々は単に確認するだけなのに、自分の記憶に留めていた作品との遭遇は、自分の内面に問いかける契機になって、嗜好による自己発見になります。嗜好は自分にとって至高であり、思考でもあります。当時のヨーロッパ絵画のテーマが日常の出来事に向けられつつあったという背景を踏まえながら、自分はオリジナルの前で何も考えずに「床に鉋をかける人々」に見入っていました。

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