六本木の「オルセー美術館展」

先日、自分の個展開催中に東京六本木まで行って、国立新美術館で開催している「オルセー美術館展」を見てきました。同展は連日賑わっているようで、館内は多くの人たちが名作の前で熱心に鑑賞していました。思えば自分が渡欧した時には、オルセー美術館はまだ出来ていなくて、オルセー駅の解体工事が進められていました。現在来日している作品はほとんどが印象派美術館にあり、マネの「笛を吹く少年」も自分は印象派美術館で見た記憶があります。30年ぶりに対面した絵画群は、思い出に浸ると言うより新しい印象を自分に残してくれました。20代の自分と50代の自分の認識の差異を感じることが出来ました。20代の頃、印象派は自分の中で退屈に感じられて、それでもオリジナルを見て、その筆致の勢いに打たれた記憶が残っています。50代の今は印象派の歴史的役割を理解した上で、リアルな表現追求の格闘を見る思いが頭を過ぎります。当時のサロンに出品されていた多くの絵画が、表面的美しさを技巧的にまとめあげることに終始して、耽美に流れた緩慢な傾向があったことは否めません。そこに現れた印象派の生き生きした表現は、粗雑に見えた故に、または現実性のあるテーマ故に非難され、無視されたであろうことは当時に詳しくなくても容易に理解できます。そんな当時の革新的絵画が今目の前にあります。歴史が価値を認め、印象派絵画としての美しさを堪能する大勢の鑑賞者に恵まれている現状を見るにつけ、現代美術も新しい価値を与え続けているところですが、同展のような賑わいはありません。自分も表現者の端くれとして、そんな思いを抱きました。    

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