「視線とテクスト」読後感

「視線とテクスト」(多木浩二著 青土社)を読み終えました。著者である評論家多木浩二は3年前に他界し、本書は遺稿集として出版されたものです。知の遺産の継承として編集され、主に建築や家具についての評論が編者によってピックアップされて掲載されています。数人の建築家を取り上げた作家論もありますが、ほとんどが建築や都市に纏わる意味論が中心です。思索の中には難解な箇所も多く、読み砕くのに時間がかかりましたが、人間の意識を建築や都市計画によって変容させ、そこに新しい価値や意味を込めることが、豊かに生きていく道標になることを思い知らされました。デザインの目的、発想構想、その役割等々が論じられている箇所にも注目しました。私がやっている彫刻とは異なり、扱っているテーマが常に生活と関わりのあるモノだけに、その意味を考え、価値を見いだすことに大変な労力を費やした評論であることを、本書を読み終えてから実感しました。度々登場する記号論については、再度自分の中で記号の持つ象徴的な意味合いを整理しておく必要を感じました。何かまとめになる文章の引用を考えましたが、内容が凝縮されているため、これぞまとめという文章が見つからず、というよりいっぱいありすぎて、敢えて引用をせずに終わりたいと思っています。

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