現代彫刻の在る環境について

「床面は設定空間であり、地面は現実空間である。因みに都市は床面からの発想であり、村落は地面からの発想である。~略~現代彫刻は、壁のあるなしにかかわらず、床面の彫刻であって地面のそれではない。作品を床面に並べるのと地面に並べるのとでは、その意味も見え方も違う。床面は観念が見えやすい。地面は物が見えやすい。床面は壁と共にそれが設定空間である限りにおいて、面であっても基本的に立体性を持つ。平らに並べられていても、そのコンセプトや観念を立体的に看て取る。」と書かれているのは「余白の芸術」(李禹煥著 みすず書房)の「画集の断章より」の中の一文です。20世紀末から現代彫刻は台座を必要としなくなり、存在意義を求めて外の空間へ出ていきました。一歩踏み込んで考えると、都市の街角に置かれている彫刻は、その限定された空間からして床面に置かれていると見るべきかもしれません。最近よく見かける村落で企画される野外トリエンナーレはどうでしょうか。地面に置かれている彫刻はどう見えるのか、地面では物が見えやすいと前述の文中にあるけれども、それは唐突に置かれた物ではなく、トリエンナーレという約束事があるため、鑑賞者側の意識も相まって、地面が床面に倒置されて設定空間化した立体として見られていると考えられます。彫刻の在る環境は、具体的な空間というより視る意識によって変容するものであろうと思います。

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