「ツァラトストラかく語りき」読後感

「ツァラトストラかく語りき」(ニーチェ著 竹山道雄訳 新潮社)下巻を読み終えました。本書は上巻・下巻に分かれ、4部構成からなる大著です。ニーチェ晩年の思想が述べられていますが、ニーチェの生涯で精神を病んでから執筆活動をしなくなる最晩年があるので、本書はそれまでの間に書かれたニーチェ哲学の集大成に位置づけられる著作と言えます。ニーチェの著作に飛翔せんとする勢いのあるパワーを感じるのは私だけでしょうか。詩を散りばめた本書にも縦横無尽に疾走するニーチェ独特の哲学があると思います。それにしてもニーチェのパワーはともかく、内容は理解困難な箇所がたくさんありました。訳者の解説にも?がついている箇所があり、ニーチェ存命当時の細かな状況を知り得なければ翻訳不可能なところもあったのだろうと思います。でも面白さは伝わりました。一部の文面にハッとさせられる輝きがありました。永劫(永遠)回帰は、本書だけでは理解できず、別の解説書に頼りました。こうした思想がどこから生まれ、そもそも意図するものは何なのか、詩情溢れる本書からこれを読み取ることは自分には出来ませんでした。本書は比喩も多く、場面場面で登場する魔術師や法王や驢馬などは何かを例えている存在であって、それらを読み取っていく洞察力も必要でした。本書を再読する機会は訪れるでしょうか。ニーチェ哲学に拘りがあれば、あるいはもう一度チャレンジするかもしれません。その時まで書棚に眠らせておこうと思います。

関連する投稿

  • 「超越論的ー論理学的問題設定の諸疑問」第69節~70節について 「形式論理学と超越論的論理学」(エトムント・フッサール著 立松弘孝訳 […]
  • 東京駅の「きたれ、バウハウス」展 先日、東京駅にあるステーション・ギャラリーで開催中の「きたれ、バウハウス」展に行ってきました。バウハウスとはドイツ語で「建築の館」という意味です。1919年に建築家ヴァルター・グロピウスによって設立 […]
  • 新聞掲載のフロイトの言葉より 昨日の朝日新聞にあった「折々のことば」(鷲田清一著)に興味関心のある記事が掲載されていました。全文書き出します。「百パーセントのアルコールがないように、百パーセントの真理というものはありませんね。ジ […]
  • 師匠の絵による「人生の選択」 昨日、長野県の山里に住む師匠の池田宗弘先生から一冊の絵本が送られてきました。「人生の選択 […]
  • 建築に纏わる東京散策 今日は夏季休暇を取得して、前から計画していた東京の展覧会等の散策に出かけました。先日も夏季休暇を使って「江戸東京たてもの園」に行ったばかりですが、今日も建築に纏わる散策になりました。例年なら夏季休暇 […]

Comments are closed.