木版画に対する思い

年齢とともに表現や思考が変化することは、自分もよくわかっています。現在は自分が20代の頃に目指した方向とまるで違う表現に変化していて、当時を振り返ることはなくなりました。先日出かけた横浜美術館の「魅惑のニッポン木版画」展では、否が応でも過去を振り返る結果となりました。当時の自分は畳大のシナベニア板を使って、大きなサイズの具象傾向の木版画を彫っていました。出品されていた風間サチコ氏の「噫!怒涛の閉塞艦」」を見ると、かつて自分が求めた世界観に似た表現があって楽しくなりました。もうひとつ個人的には水船六州氏の「草刈唄」と「牧神」のオリジナルが見られてよかったと思っています。前から油絵みたいな木版画の効果が素敵だなぁと思っていました。「牧神」はピカソの影響でしょうか、温かい抽象の中に詩情を感じさせるものがありました。水船氏は彫刻家でもあり、さらに自分が通っていた横浜のミッション系学校の教壇に立っていられたこともわかって親近感を持ちました。在職期間を見ると自分はお会いしたこともなく、学院史に氏名が刻まれているだけでした。吉田遠志氏と吉田政次氏の抽象傾向の版画は自分がRECORDに応用したいくらい自分の感性に働きかけてきました。今回の展覧会は木版画に関する思いが募って、自分も現在の表現で木版画を試みたいと思った展覧会でした。

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