「知識を増すものは苦痛をも増す」

苦痛、苦悩、苦悶は、可能な限り避けたい現象です。それを回避するため何かに縋ったり、逃亡したり、自己弁護をしたり、痛みを和らげる特効薬を使ったり、自分を含めて人生のうちにさまざまな苦しみがやってきます。苦しまない人生はありません。まず、人生には避けられない苦しみありきと考えた方がいいのかもしれません。哲学者は苦しみをどう考えるのか、「意志と表象としての世界」(A・ショーペンハウワー著 西尾幹二訳 中央公論社)に中に盛り込まれている文面を引用すると「意志の現象が完全になるにつれ、苦悩もますますあらわになるものだからである。たとえば植物にあってはまだ感受性がないから、したがって苦痛もない。~略~こうして認識が明晰で、知能が高い人であればあるほど、いよいよ苦悶は増大していくのである。天才をうちにいだいている人は苦悩ももっともはなはだしい。わたしはここで、『知識を増すものは苦痛をも増す』という『伝道の書』の言葉をとりあげ、これまで述べてきた意味で、つまりここでいう知識を、単なる抽象的な知識ということではなく、認識一般の程度ということに関連づけて理解することとしたい。」というもので、苦しみは知識に比例して増していくと述べています。本書を読み進んでいくと、苦しみに纏わる論考はさらに深まるようです。苦しみを人生の偶発的なものではなく、予定されていた現象として捉える箇所があって、その理論展開に興味を覚えます。

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