横浜の「下村観山展」

今日は朝から工房に篭って制作三昧でした。少しずつ調子も上がり、休庁期間の残り2日間を有効に過ごしたいと思っています。夕方まで作業を精一杯行い、その後は家内と車で地元の横浜美術館に出かけました。現在「下村観山展」を開催していて、前から見たいと思っていたのでした。下村観山は晩年、横浜の実業家原三渓の知遇を得て、横浜本牧に移り住んだことは知っていましたが、観山ワールドの全貌を知らずにいたので、今回の大回顧展は楽しみでした。東京国立近代美術館で「木の間の秋」を見たことがあって、その描写に眼が吸い寄せられた記憶があります。「古格を愛し、温雅で内省的、謹厳淳朴な生き方を選んだ画家」と図録の解説にある下村観山は、革新を求めつつ復古的傾向を示す画風で知られるようになったようです。自分の感想で言えば、画題がどうであれ、描画の緻密さ確かさは眼を見張るものがあると思いました。ヨーロッパ留学時代に模写したラファエロやダ・ヴィンチにも水彩模写とは思えない完成度があります。古画が念頭にありつつも西洋の陰影法をもって描き出される新しい日本画の境地に今後どう向き合うのか、実はその答えを見つけるには、享年57歳で没した下村観山は早すぎた生涯と言えるのではないでしょうか。夭逝でもなく長寿でもなかった下村観山ですが、抱えた課題に答えを出すのには57歳では短かったように自分には思えるのです。最後に自分が印象に残った作品を挙げます。いずれも大作が多いのですが、「元禄美人図」(双方とも)「小倉山」「鵜図」「手向」「老松白藤図」です。家内は「四眠」を挙げていました。龍が熟睡している様子が何ともいえないと言っています。

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