アカシャ記録とは何か

「シュタイナーの思想と生涯」(A.Pシェパード著 中村正明訳 青土社)を読んでいて、自分の無知のせいで、何とも信じ難い論理に困惑を覚えます。霊界が存在する、物質界とは別の世界がある、こんな荒唐無稽な記述に初めは面喰いましたが、丁寧で分かりやすい解説のおかげで、これも学問として漸く認識するに至りました。アカシャ記録というこれも聞き慣れないコトバが気に留まりました。その記述がある10章から引用します。「シュタイナーの霊学のとびぬけて重要な要素は、人間の起源と運命についての記述である。」「歴史的現象はいわゆる『アカシャ記録』、すなわち『消滅することのない記録』に保存されているという。」さらに解説者はシュタイナーが書いたコトバを掲載しています。シュタイナー曰く「太古の時代に関する事実はオカルト研究によってとらえられないものではない。人間は肉体の存在として生まれた以上、肉体の死とともに物質的な部分は消滅する。しかし、自らの深みから肉体に存在の基盤を与えている霊的な力は、それとはちがって『消えてしまう』ことはない。霊的な力は自分の足跡ないしは自分のありのままのイメージをあとに残すのであり、それは世界の霊的な基礎に刻みこまれる。目に見えない世界をも知覚する能力を身につけた人はだれでもついには、世界の歴史のあらゆるできごとが記録されている広大な霊的パノラマを見る段階にまで達する。非物質的なすべてのもののこうした消滅することのない足跡は、霊学においては『アカシャ記録』と呼ばれている。」まさに死後の世界観における魂の存在を示したものでしょうか。自分には測り知れない学問ですが、これはシュタイナーの科学的論考があって示されているもので、しかも事例を鵜呑みにしてはいけないとシュタイナー自ら謙虚に言っているところが、客観的洞察を可能にしていて、不思議な立地条件にある学問を、学問として万全な体制を図っているところがさらに限りなく不思議に思えてきます。

関連する投稿

  • 「超越論的ー論理学的問題設定の諸疑問」第69節~70節について 「形式論理学と超越論的論理学」(エトムント・フッサール著 立松弘孝訳 […]
  • 東京駅の「きたれ、バウハウス」展 先日、東京駅にあるステーション・ギャラリーで開催中の「きたれ、バウハウス」展に行ってきました。バウハウスとはドイツ語で「建築の館」という意味です。1919年に建築家ヴァルター・グロピウスによって設立 […]
  • 新聞掲載のフロイトの言葉より 昨日の朝日新聞にあった「折々のことば」(鷲田清一著)に興味関心のある記事が掲載されていました。全文書き出します。「百パーセントのアルコールがないように、百パーセントの真理というものはありませんね。ジ […]
  • 師匠の絵による「人生の選択」 昨日、長野県の山里に住む師匠の池田宗弘先生から一冊の絵本が送られてきました。「人生の選択 […]
  • 建築に纏わる東京散策 今日は夏季休暇を取得して、前から計画していた東京の展覧会等の散策に出かけました。先日も夏季休暇を使って「江戸東京たてもの園」に行ったばかりですが、今日も建築に纏わる散策になりました。例年なら夏季休暇 […]

Comments are closed.