ターナーの豊潤な空気感

先日、東京都美術館で開催されている「ターナー展」に行ってきました。家内は学生時代からターナーのファンで、帆船を描いた絵画を大学に提出する課題に応用していたようです。家内は大学で空間演出デザインを学んでいて、舞台美術を考える際、ターナーの求めた光陰が常に頭にあったと言っていました。私はリード著「芸術の意味」によってターナーを知りました。私の場合は初めに知識ありきで、オリジナルを見たのはずっと後でした。今回ターナーの世界に触れ、筆致が豊潤な空気感を表して余りある表現に圧倒されました。色彩実験と称する作品にも表現しようとする何かの意図が読み取れました。絵画の絵画たる所以は、平面に深遠なる奥行きを感じさせ、また漂う空気は写真や影像とは異なる印象を鑑賞者に齎すものと理解しました。私は忽ちターナーの世界に入り込み、そこで新鮮な酸素を胸いっぱいに吸い込んで、光に包まれる息吹きを感じ取っていました。家内は涙が出そうなほど感動していて、ターナーが醸し出す表現を、自分の演奏活動に当て嵌めて、その情感表出の丁寧さを感じ取っていました。有名な巨匠のまとまった展覧会とあって、多少の混雑は覚悟して来ましたが、それでも優れたものとの出会いは何事にも代えがたいと感じました。

関連する投稿

  • 再開した展覧会を巡り歩いた一日 コロナ渦の中、東京都で緊急事態宣言が出され、先月までは多くの美術館が休館をしておりました。緊急事態宣言は6月も延長されていますが、美術館が漸く再開し、見たかった展覧会をチェックすることが出来ました。 […]
  • 週末 土練り&美術館鑑賞 新型コロナウイルス感染症の影響で緊急事態宣言が出されている中、東京の博物館や美術館に行っていいものかどうか、数日前まで迷っていましたが、展覧会の開催期間終了が迫っていることもあって、インターネットや […]
  • 東京の展覧会を巡った一日 今日は工房での作業は止めて、家内と東京にある美術館に出かけました。コロナ渦の影響で最近ではネットによる予約が一般的になっていて、入館時間も決められています。今日は2つの美術館、3つの展覧会を巡りまし […]
  • 虎ノ門の「近代日本画の華」展 東京港区虎ノ門にある大倉集古館へこの歳になって初めて足を踏み入れました。若い頃から美術館巡りをしているにも関わらず、大倉集古館には行かなかったのが不思議なくらいです。調べてみると大倉集古館は日本で最 […]
  • 週末 加飾&展覧会巡り 週末になりました。朝7時に工房に出かけ、10時までの3時間、新作の彫り込み加飾をやっていました。早朝制作を遂行したのは、今日は東京と横浜の博物館や美術館へ行く予定があったためでした。いつもならNOT […]

Comments are closed.