「石田徹也 創作ノート 夢のしるし」

ちょいと前になりますが、栃木県の足利美術館に表記の展覧会を見に行きました。創作ノートを掲載した図録を購入してきて、今も折に触れて眺めています。石田徹也は夭折の画家でしたが、どうも腑に落ちないのが31歳の若さで命を落とすことになった踏切事故で、本当に単純な事故だったのかどうかということです。石田徹也は精神を病んでいたようで、踏切事故にはそうした要因もあったのではないかと疑ってしまいます。ともかく石田徹也の世界は強烈なペシミズムに貫かれた具象絵画で、それも現代社会に潜む画一化された功利主義を暴くものです。主となる登場人物は全て自分です。企業戦士の虚無が描かれていますが、履歴からその社会的立場に立ったことが一度もないことがわかっています。むしろ組織的人間を想像で扱ったおかげで管理社会を冷静で透徹した目で描き切れたのではないかとも思います。自分のように組織と個人活動を行ったり来たりするような二足の草鞋人間では、社会を突き放して視ることができません。シュミレーションされた石田自身は次第に擬人化、合体化を繰り返し、笑いやナンセンスの世界にも触手を伸ばしていきます。残された膨大な創作ノートはアイデアやコトバが満載してあって、いろいろな箇所で目が留まります。絵を描き続けて、アイデアを絞って、また絵に没頭して散った31歳の画家。特異な存在はいつまで輝き続けるのか、一時の時代世相か、それとも永遠か、画家の存在の位置が自分にはまだ見えません。

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