ギリシャ悲劇の起源

「ギリシャ悲劇の起源という問題は、まことに迷路と呼ばざるをえないほど複雑怪奇をきわめている。」「悲劇が悲劇の合唱団から発生したものであること、もともと悲劇は合唱団にすぎなかった~略~」「ギリシャ人はこの合唱団のために、架空の自然状態をあらわす吊り桟敷を設け、その上にこれまた架空の自然の生きものを置いた。悲劇はこういう基礎の上に生いたったものであり、それだけの理由からでもすでに始めから、現実といちいち対照するわずらわしさをまぬかれていることはいうまでもない。」「どんなにかすかな苦悩にも、どんなに重い苦悩にも無類の感受性を持っていた深遠なギリシャ人、その切れるようなまなざしで、いわゆる世界史の恐ろしい破壊活動と自然の残虐性のただ中に目をそそいで、仏陀的な意志の否定にあこがれる危険にさらされていたギリシャ人は、その合唱団によって慰めを得たのである。彼らを救ったのは芸術だ。そして芸術によって自分のために彼らを救ったのは…生なのだ。」現在読んでいる「悲劇の誕生」(ニーチェ著 秋山英夫訳 岩波書店)で、気に留めた箇所を羅列しましたが、続くソフォクレスやアイスキュロス、エウリピデス、ソクラテス等々が悲劇芸術を主題として取り巻いていく本書前半は、一筋縄ではいかない読解を求められつつ、ニーチェの独断的とも思える破天荒な面白さに時が経つのを忘れます。いったいニーチェとはいかなる人物なのか、興味は尽きません。

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