アポロン的夢幻とディオニュソス的陶酔

「悲劇の誕生」(ニーチェ著 秋山英夫訳 岩波書店)の巻頭で古代ギリシャから借用し、芸術の発展を分析するにあたって、ニーチェはアポロン的夢幻とディオニュソス的陶酔という2分化を提唱しています。文中の言葉を引用すれば、アポロン的夢幻とは「われわれはすべて夢の中を生みだすことにかけては完全な芸術家といえるが、この夢の世界の美しい仮象が、あらゆる造形美術の前提であり、それどころか、のちに見るように、文学の重要な一半である演劇の前提でもある。」それに対しディオニュソス的陶酔とは「ディオニュソス的なものは陶酔の類推によって、われわれにきわめて身近なものとなる。原始的な人間や民族のすべてが賛歌のなかで語っている麻酔的飲料の影響によって、あるいは全自然を歓喜でみたす力強い春の訪れに際して、あのディオニュソス的興奮は目ざめる。」とあります。言わばコスモスとカオスであるアポロン的とディオニュソス的と称する相対定義は、かつて読んだO・シュペングラー著「西洋の没落」に頻繁に出てくるアポロン的魂とファウスト的魂の基盤になった定義であろうと思われます。シュペングラーはニーチェからの影響があり、文化・文明史もこうした相対定義で論じられると図り、さらに東方的なマギ的魂を付け加えています。アポロン的とディオニュソス的分析を自分は大変興味深く感じていて、芸術を考えていく上で、この定義に従った思考を自分の中に留めたいと思っています。甚だ西欧的な論証ですが、自分の教育基盤がここにあるので、自分としては分かりやすい捉えが出来るのです。この双方が綿密に絡み合って芸術が培われていく過程に思いを馳せているところです。

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