写真集「証言と遺言」

先日、横浜新聞博物館で開催されていた「福島菊次郎展」に行ってきました。原爆投下後のヒロシマの一家族を被写体にして、当時の凄まじい生活を抉り出した世界は特筆に値します。視覚に訴える報道写真は、インパクトがあって思わず惹きつけられます。紛れもない真実を映し出した時代の証言、これが展覧会を見た第一印象です。展示されている数多い写真はモノクロばかりで、それだけに強烈な表現となっていました。色彩がない方がストレートに伝わるように思えます。展覧会場にはヒロシマの被爆者中村さんの記録の他に、東大闘争やあさま山荘事件や三里塚等の記録が並び、まさに福島菊次郎に与えられたスローガン「一枚の写真が国家を動かすこともある」とは言い得ていると実感しました。表題の写真集に掲載され、また展覧会でも掲示された文章があり、自分の心に沁みた箇所を書き出します。「ある日、日頃無口な中村さんが、『あんたに頼みがある、聞いてくれんか』と畳に両手をついて泣きながら言った。『ピカにやられてこのザマじゃ、口惜しうて死んでも死に切れん、あんた、わしの仇をとってくれんか』。予想もしない言葉に驚き『どうして仇をとればいいのですか』と聞いた。『わしの写真を撮って皆に見てもろうてくれ。ピカに遭うた者がどんなに苦しんでいるか分かってもろうたら成仏できる。頼みます』と僕の手を握った。『分かりました』と答えた。しかしこの家に写真を撮りにきてもう1年も過ぎたのに、極貧の生活にどうしてもカメラが向けられなかった僕は『本当に写してもいいのですか』と聞き返した。『遠慮はいらん、何でもみんな写して世界中の人に見てもろうてくださいや』その日から僕は中村さんの病苦と一家の極貧生活を憑かれたように写し始めた。日英語版の僕の最初の写真集が出版されたのを見て、中村さんは65歳で亡くなったが、僕は撮影のストレスで精神病院に入院した。プロの写真家になったのは退院後である。」福島菊次郎さんは現在92歳の現役です。

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