風景の変貌

通勤に使うバス停留所の近くに大きな旧家がありました。立派な石垣と太い樹木に囲まれた屋敷で、そこには自分と同じ歳の少年がいて、幼い頃よく遊んでいました。少年と書いた訳は、子供の頃に彼は事故で他界していたからです。私たちは悪戯好きで、彼の屋敷の裏山に廃材で棲家を作り、忍者ごっこをやった思い出があります。最近大きな屋敷に住む人がいなくなったと聞いていましたが、先日大きな樹木が切り倒され、屋敷も無くなっていました。こんなに広かったのかと改めて整地された土地を眺めて思いました。自分が幼かった頃は、このあたりは田畑が続き、家も疎らで、雑木林が点在していました。道は舗装がなく、たまに通るオート三輪が砂埃を舞い上げていました。牛にひかれた荷車も通っていきました。横浜市のベッドタウン化した現在の環境を考えると、信じられないくらい風景が変貌を遂げています。自分の記憶が更新されて、昔の道幅や田畑の尺度が掴めません。少なくても樹齢100年以上の樹木は残せなかったものか懐古に耽る自分は、ただ眼前で変貌していく風景を眺めているだけです。

関連する投稿

  • 厚板下書き&バラ園散策 中規模の新作は今日から作り始めました。過去幾度となく私が作ってきたテーブル彫刻になりますが、今回の新作では陶彫部品を接合せず、木材のみで作ります。厚板を4本の柱で支える構造ですが、厚板には文様化した […]
  • 閉庁日(休庁期間)の始まり 今日から職場は閉庁日(休庁期間)に入ります。私の職場は1月5日まで閉庁するので、休庁期間は合計9日間になり、例年この時期、私は来年夏に発表する陶彫による集合彫刻の制作に没頭しています。これがなければ […]
  • 彫刻家として… 4月になりました。昨日は管理職退職辞令交付式に参加して、私の公務員人生にピリオドを打ちました。今まで職種を隠してきましたが、同じ職種の方々がこのNOTE(ブログ)をご覧になっていることもあり、今にな […]
  • 「即位礼正殿の儀」で創作活動の機会を得る 今日は「即位礼正殿の儀」で、官公庁は休日になりました。「即位礼正殿の儀」とは、天皇陛下の御即位を内外に広く披露するための儀式です。言わば外国で称される「戴冠式」のようなものだろうと思います。天皇制が […]
  • ヨーロッパを懐かしむシュトレン この時期になると、神奈川県川崎にある菓子店「マリアツェル」に出かけます。20代の頃、オーストリアのウィーンに暮らしていた自分は、日本人パティシエと仲良くなり、よく遊んでいました。彼は菓子修行でホテル […]

Comments are closed.