「雨-労働の残念-」雑感

既に終わってしまった「墓は語るか」展で印象に残った出品作に故若林奮による「雨-労働の残念-」がありました。彫刻のもつ「隠された場所」を提示した同展では、まさにぴったりのコンセプトを有する作品ではなかったかと思いました。床に置かれた平たい矩形の立体は、表面を金属板で覆い、その内部にはどんなものが存在するのか、ほんの少し顔を覗かせている連続する小さな矩形以外には手掛かりがない作品というのが「雨-労働の残念-」を見た感想です。自分は若林ワールドを決して饒舌ではない無口でサービス精神を欠いた造形と決めつけていますが、そこには深い思索に富んだ骨太な造形をも感じています。若林奮は頑固で一徹な理論を持った作家だったのでしょうか。自分が学生だった頃に若林先生の講義を聞いても理解できなかった思い出とともに、痩せて神経質そうな先生の雰囲気が浮かんできます。タイトルにある「雨」は若林先生の他の代表作にも使われていて、自然現象を人工的な物質に置き換えて表現する若林ワールドの常套手段と思われます。しかも私たちが目にする自然と到底考えもつかない材質を用いて、それがそのまま詩情を醸し出すところに私自身は魅力を感じてしまうのかもしれません。鉄工場から生まれた詩魂、しかも自分の造形の痕跡を隠してしまうので、鑑賞には隠された思索を暴く謎解きが必要だと思っています。

関連する投稿

  • 週末 制作と鑑賞の狭間で… 自分の制作には思索あり、他の作品の鑑賞もまた思索あり、で制作時間に追われているのは重々承知の上で、今日の午後は美術館に出かけてしまいました。午前中は午後の時間を空けるため、木彫の作業に集中力をもって […]
  • 色彩感覚とは何か? 画家が捉える色彩とは何か?デザイナーが捉える色彩とは何か?自分が高校生の頃、工業デザイナーを目指してデッサンや色彩構成の勉強をしていて、自分の色彩感覚が極めて鈍いことを知りました。隣り合う色彩の関係 […]
  • 週末 久しぶりの美術館巡り 作品の制作工程が厳しい中、3月になって初の美術館巡りをしました。東京に出かけていくのは久しぶりでした。ギャラリーせいほうにも立ち寄って7月個展の打ち合わせを行いました。まず最初に訪れたのは東京上野の […]
  • イサム・ノグチと李禹煥 今日は自分が少なからぬ影響を受けた2人の芸術家について書きます。2人に共通するところは外国籍でありながら日本に関わりが深く、そのため実際の作品を目の前で見ることができるので、親近感があることです。イ […]
  • 造形美術のバイブル 「芸術の意味」(ハーバート・リード著 瀧口修造訳 […]

Comments are closed.