プリミティヴ・アートについて
2013年 7月 12日 金曜日
若い頃、滞欧中にプリミティヴ・アートに関する分厚い書籍を買いました。この書籍はドイツ語で書かれたものですが、現在までドイツ語を解読する気力が起こらず、ただ図版を眺めているだけの資料になっています。そこにピカソやモジリアーニの絵画とアフリカの仮面が掲載されていたので、その箇所は名もなきアートと近代の巨匠の関係性について論じているのではないかと思っています。この書籍は解説が読めなくても図版の豊富さと画像の迫力を見るだけで充分に気持ちが満たされます。西洋美術史では中世からルネサンスに至って写実的な描写方法が確立され、近代になってその様式史として積み上げてきた表現が低迷しました。印象主義は袋小路に陥った旧態依然とした表現を打破するために生まれた運動でしたが、さらにプリミティヴ・アートはその先にある立体派や表現主義を生む契機になったのではないかと思われます。人間の生きる喜びが稚拙とも思われるダイレクトな表現によって示されていて、今でも人の心を掴んで離さない魅力があります。プリミティヴ・アートは近現代美術の作家が発見した美的価値観であり、人が古代から持ち続けている人間としての営みとは何かを考えさせてくれるモノだと認識しています。
関連する投稿
- 「絵の証言」を読み始める 「絵の証言」(佃堅輔著 […]
- 週末 梱包作業&美術館鑑賞 今日は梅雨らしい鬱々とした天気でした。午前中は昨日から続いている作品の梱包作業をやっていました。今日は若いスタッフが2人朝から来ていて、それぞれ制作に励んでいましたが、10時半頃スタッフ2人と家内を […]
- ドイツ表現派に纏わる雑感 現在、通勤中に読んでいる「触れ合う造形」(佃堅輔著 西田書店)と、職場に持ち込んで休憩中に読んでいる「見えないものを見る カンディンスキー論」(ミシェル・アンリ著 青木研二訳 […]
- ボイス世界観の再考 先日見に行った「ヨーゼフ・ボイス展」が契機になり、改めてボイスの世界観を考えてみたいと思います。ボイスに関することは過去何回かNOTE(ブログ)にアップしていますので、今回は再考とさせていただきまし […]
- 西欧思想に於ける芸術の意味 現在読んでいる「芸術の摂理」(柴辻政彦・米澤有恒著 […]
Tags: ドイツ, 書籍, 芸術家
The entry 'プリミティヴ・アートについて' was posted
on 7月 12th, 2013
and last modified on 7月 13th, 2013 and is filed under note.
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.
Both comments and pings are currently closed.