プリミティヴ・アートについて

若い頃、滞欧中にプリミティヴ・アートに関する分厚い書籍を買いました。この書籍はドイツ語で書かれたものですが、現在までドイツ語を解読する気力が起こらず、ただ図版を眺めているだけの資料になっています。そこにピカソやモジリアーニの絵画とアフリカの仮面が掲載されていたので、その箇所は名もなきアートと近代の巨匠の関係性について論じているのではないかと思っています。この書籍は解説が読めなくても図版の豊富さと画像の迫力を見るだけで充分に気持ちが満たされます。西洋美術史では中世からルネサンスに至って写実的な描写方法が確立され、近代になってその様式史として積み上げてきた表現が低迷しました。印象主義は袋小路に陥った旧態依然とした表現を打破するために生まれた運動でしたが、さらにプリミティヴ・アートはその先にある立体派や表現主義を生む契機になったのではないかと思われます。人間の生きる喜びが稚拙とも思われるダイレクトな表現によって示されていて、今でも人の心を掴んで離さない魅力があります。プリミティヴ・アートは近現代美術の作家が発見した美的価値観であり、人が古代から持ち続けている人間としての営みとは何かを考えさせてくれるモノだと認識しています。

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