詩集「月に吠える」読後感

詩はコトバによるイメージ世界を味わうもので、説明によって物語を紡ぐ小説や思索や雑感を伝える随筆とは表現形式が異なります。しかも詩に接した時の気分や環境、年齢等によっても詩の印象が変わることを、今回「月に吠える」(萩原朔太郎著 日本図書センター)を再読して感じました。若い頃には「竹とその哀傷」が印象として残り、地面から竹が鋭く伸びる、ただそれだけの情景が頭に刻まれました。全体を覆う心象風景としてのコトバは記憶に残らなかったのでした。あれから30年を経て読んだ詩は、鬱積した感情や時に可憐な情愛が滲み出ているコトバ、また独特な鋭く尖った感性を感じずにはいられませんでした。詩集の冒頭に北原白秋からのコトバがあるので抜粋します。「清純な凄さ、それは君の詩を読むものの誰しも認め得る特色であらう。然しそれは室生君の云ふ通り、ポオやボオドレエルの凄さとは違ふ。君は寂しい、君は正直で、清楚で、透明で、もっと細かにぴちぴち動く。」加えて詩集の結びにある室生犀星のコトバの抜粋をもって「月に吠える」の読後感といたします。「かれにとつて或る一点を凝視するやうな祈祷の心持!どうにかして自分の力を、今持つてゐる意識を最つと高くし最つと良くするためにも此疾患を追ひ出してしまひたいとする心持!この一巻の詩の精神は、ここから発足してゐるのであつた。」

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