「貴婦人と一角獣展」の巨大綴織

先日、東京六本木にある国立新美術館で開催中の「貴婦人と一角獣展」を観てきました。大きな展示室に6点の巨大なタペストリー(仏語:タペスリー)が飾られた空間は圧巻で、補色である紅色と深緑の色彩が織りなす画面に見入ってしまいました。平織(綴織)は自分の大好きな技法のひとつで、30歳で滞欧生活を切り上げる時に、トルコで平織の絨毯を購入しました。そこに表れる図像を読み解くのも面白いと思います。今回の「貴婦人と一角獣展」では「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」という本能に因むタイトル5点と「我が唯一の望み」というタイトルがついた作品1点があり、大きな展示室を囲むように展示されていました。周囲の部屋にはタペストリーに関連した資料の展示がありました。一緒に行った家内は、1点ずつ織り込まれた貴婦人の相貌を見て、それぞれ年齢が異なるのではないかと推察していました。私は「我が唯一の望み」とは何を意味するのか、五感を総括するものなのか、何故この貴婦人だけに天蓋がついているのかをボンヤリ考えていました。謎の多い作品だけに魅力的に見えるのかもしれません。いずれにせよ圧倒される作品であることに間違いなく一見に値するものと思いました。

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