「A・ロペス展」都市の変遷

Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「アントニオ・ロペス展」について感想を書きます。ロペスはスペインの具象絵画界の巨匠で、日本では初の展覧会だそうです。私が見に行った日も多くの鑑賞者がいて熱心に作品に見入っていました。ロペスの描く具象世界は所謂スーパーレアリスムとは異なり、筆致の情感が伝わってくる画風で、古典的な技法を基礎にしています。人体の的確な肉付けを把握するため塑造を試み、またデッサンを多く描いています。スペインはベラスケスに代表される具象絵画の伝統国で、ロペスはその王道を歩く巨匠と言えます。家族や身近な風景を丹念に描く一方で、都市景観を巨大な画面に描き込んでいます。この都市景観の表現の卓抜さに自分は感動を受けました。都市景観の俯瞰。緻密に描かれた箇所と大きく捉えられた箇所の微妙なバランス。現代でも具象は写真とは異なり、作者の意図が抑揚された描写となって表れると自分は思っています。在りのままの情景を描いていても、決して在りのままではなく、たとえば時間を封じ込めた都市の変遷がそこに描かれていて、観る者を悠久の時間に誘います。ロペスのような画家がいる限り価値観が多様化した現代にあっても具象表現は健在であると自分は考えています。

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