「病める舞姫」読後感

「病める舞姫」(土方巽著 白水社)を読み終えました。秋田県の半農の蕎麦屋に11番目の子として生まれた土方巽は、幼児の頃、農繁期には籠に入れられて田圃の畔に朝から晩まで置いておかれたようです。そうした東北での成育歴と生来の文学好きが相まって、本書が執筆されたのだろうと推測されます。郷土で過ごした少年期を、独特な視点から詩を綴るように描かれた本書は、暗黒舞踊家土方巽の頭の中のイメージから発していて、自叙伝とはまるで性格の異なるものでした。生前、本人も具体的な成育歴を語りたがらない傾向にあったようで、これも推測ですが、舞踊家として自身の周囲を神秘的にしておきたかったのではないかと思うのです。ともあれ「病める舞姫」は目で追うだけでは内容が入りにくく、読んでいる側も頭を空白にしていなければイメージが伝わらないと感じました。最後に澁澤龍彦による土方巽論を一部引用します。「私たちが知りつくしている古典バレエのリズミカルな、様式的な動作への期待を完全に裏切る、今まで私たちが一度として想像したこともないような、奇怪な肉体行使の可能性を暗示した驚くべきダンスであった。~略~ヨーロッパでは肉体のエネルギーはリズミカルな運動というかたちで表現することしか知られていないが、暗黒舞踊はこれを断絶、衰弱といったようなかたちにおいても立派に表現し得ているのである。これが土方巽という天才の発見した、まさしく日本の風土に根ざした踊りの形式ではないかと私は思っているのだ。」

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