楽しかった「空想の建築」展

このところ美術展によく出かけています。感想の機会を改めて持つと断言しているので、最近出かけた順番に展覧会の感想をアップしていきます。まず、連休中に出かけた町田市立国際版画美術館。同館で開催していた「空想の建築」展は自分にとっては大変有意義で、また楽しい展覧会でした。中世の画家ピラネージの細密な建築版画と、粗いタッチが空間を縦横無尽に走る「牢獄」シリーズがもう一度見たくて訪れましたが、現代の版画家であるエリック・デマジエールの室内を描いた版画にも魅了されました。ちょうど来年に向けてバベルの塔のような建築形態を陶彫で作ろうと決めていたところだったので、版画家のイメージが作り出す不可思議な建築物とその構図や独特な視点に自分が取り巻かれる感覚を持ちました。エリック・デマジエールの建築形態のひとつひとつのディテールが自分の感性の襞に触れて、自分が立体として甦らせたい衝動にも駆られました。日本人芸術家では、製図のような技法で近未来の風景を描く野又穣氏や、建築雛型もしくは機械製品にも見えるボックスアートを作っているコイズミアヤ氏の作品にも感銘を受けました。コイズミ氏の作品は、折しもこの時ボックスアートの巨匠コーネルの伝記を読んでいたところだったので、その関連として興味関心を持ちました。

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