新作は崩れた塔

先月の制作追い込みの大変な時に次なる作品のイメージが浮かびました。これはいつものことで気持ちが追い詰められている時ほど発想が豊かになるのかもしれません。今回は中世のフランドルの画家P・ブリューゲル作「バベルの塔」が発想の源泉となり、崩れた塔を陶彫の集合体で作ろうと思います。まだ雑駁なイメージしか思い浮かびませんが、円錐状に構築された彫刻が頭にあります。大きな円錐をどう作るのか、技巧的な問題は多々ありますが、いつものようにイメージを優先していきたいと思います。P・ブリューゲルは自分が20代の頃にウィーンの美術館で見て以来、頭から離れられない画家になりました。「バベルの塔」はブリューゲル作品群のなかでもとりわけ好きな作品です。そんなことが次作のイメージに結びついたのかもしれません。塔は不完全なまま風景の中に放置されていますが、天に届けとばかりに聳え立った建造物です。旧約聖書によれば崩壊は神の仕業となっていますが、自分は宗教性よりも、より大きな造形空間を得るために欠損した塔を作ることにしました。完璧な完成形には行き場のない窮屈さがあります。発掘された古代の品々は、欠損を補う現代人の想像力が試されると同時に豊かな空間を感じさせてくれるのです。新作の塔も発掘品のような豊かな空間を創出したいと考えています。

関連する投稿

  • カール・コーラップの世界 ウィーン幻想派画家やフンデルトワッサーほど国際的な名声を得ていないので、カール・コーラップを日本で知ることはありませんでした。20数年前にウィーンにいた頃、コーラップのタブローや版画を多くの画廊が扱 […]
  • 上野の「ブリューゲル展」 先日、東京国立博物館に行った折に、近くにある東京都美術館に足を延ばし、同館で開催中の「ブリューゲル展」を見てきました。ブリューゲルと言えば、私は若い頃滞在していたウィーンの美術史美術館で見ていた、民 […]
  • 京橋の「サイトユフジ展」 一昨日、東京の京橋にあるギャラリーユマニテで開催中の「サイトユフジ展」に行ってきました。サイト(斎藤)さんは山形県出身でオーストリアのウィーンに長く滞在し、ウィーン幻想派が好んだ古典技法を自らも取得 […]
  • 「道化帽のさまざまな光景」ルードルフ・ハウズナー 「絵の証言」(佃堅輔著 […]
  • 「触れ合う造形」読後感 「触れ合う造形」(佃堅輔著 […]

Comments are closed.